
ブロックチェーンが熱い国がどこであるかご存知でしょうか?
アメリカ、それとも中国?
いいえ、実は今バルト三国のひとつ、エストニアがブロックチェーン技術において注目されているのです。
今回は並み居る大国の中で、一際存在感を放つエストニアでのブロックチェーン技術の導入事例、そして日本においてもそれらが活用できるのかについても検証していきます。
1.エストニアってどんな国?
近年、奪い合いともいえる熾烈なIT産業誘致合戦が繰り広げられる欧州において、世界経済フォーラムに「最も起業家精神が旺盛な国」として今年選出され、起業家を増やしているのがエストニア。
海外に向けて事業展開している、あるいはこれからしようとしている人なら、どこかでその名を聞いたことがあるかもしれません。
そもそもエストニアとは、どんな国なのでしょうか?
エストニアは北ヨーロッパ、バルト三国のひとつである共和制国家。
公用語はエストニア語ですが、複数言語を話せる国民が多数を占めます。
IT教育が盛んで、外国企業がIT進出するケースも多く、またあのSkypeを生んだ国でもあります。
昨今では1990年代後半から始まった電子政府を構築する取り組みや、国内外を対象に発行している電子居住権など先進的な施策を実施しており、世界で最も政府の電子化が進んだ未来型国家といえるでしょう。
2.主なブロックチェーンの活用事例
エストニアでは行政による公的認証サービスをブロックチェーンを利用して効率化させるプロジェクトがあります。
その名もBitnationといい、主な活用事例は次の通り。
・必要なことはIDカード1枚でOK
エストニアでは、IDカード1枚あれば税金・選挙・会社設立・銀行手続が可能。
注目すべきところは、わかりにくいブロックチェーンを国民でもカンタンにわかりやすく使うことができるようにIDカードに収めてしまったことにあります。
エストニアでは、IDカード1枚で税金・選挙・会社設立・銀行手続などあらゆるサービスにおける諸々の面倒な手続きが可能となりました。
実際、国内で法人を立ち上げようと思ったら、会社設立までわずか20分というスピードで完了してしまうなど、すべてが効率化され、わかりやすく、早くなりました。
・全国民の健康データをブロックチェーンが管理
エストニアでは、すべての医療データの完全性がBlockchain技術によって保証されています。
国民の健康データ管理などもブロックチェーンが特異とする分野のひとつ。
どんなに大量のデータベースがあっても、国民はセキュアに、何千ものサービスに瞬時につながることができます。
さらに電子患者記録などもブロックチェーンで管理される予定で、健康データの改竄や大規模障害などに対応することができるとのこと。
こうした取り組みで用いられているのが、Planetway 社の「avenue-cross」という分散型データ連携を可能とするデータインフラ。
また、セキュリティとデータの完全性を証明した状態でのデータの相互連携を可能とし、更に、アクセス履歴の完全な追跡を可能となります。
エストニアではこれとブロックチェーン技術を組み合わせることで、これまでは情報の秘匿性等の理由で活用が難しかった領域を含めて、多様な業種・業界間におけるデータ活用を実現することができました。
3.日本での試み
日本でも企業や自治体で、エストニアの例を元にブロックチェーン技術を活用する試みが進められています。
東京海上日動は、エストニアの国民番号制度を支える非常に高いセキュリティ技術を適用したデータ連携基盤である「avenue-cross」と従来のブロックチェーン技術を合わせて活用することで、革新的な業務効率化を実現することを目指しています。
具体的には、福岡市にある医療機関との連携して、傷害保険金請求書に記載の医療機関に対しブロックチェーンを通じて入通院期間などの医療情報の提供を要求し、データ連携基盤を通じて医療情報等のデータを受領するというもの。
これにより医療情報に対するセキュリティを確保しつつ、保険金支払業務の簡略化、迅速化が可能になるとしています。
4.私の考察
ただ、ブロックチェーンは技術的にはまだ発展段階期にあるといえるでしょう。
日本国内であれば、専門性のある民間のエンジニアや技官がすくなく、また実装ノウハウが不足しているといった課題があります。
今後は、エンジニアの養成を含め、国・自治体・企業が本格的な導入のビジョンをつくることから始めるのが望ましいでしょう。