
最近、新しい通貨の概念として注目されてきているのが仮想通貨。
ビットコインは便利な通貨だけど、仮想のお金ということでなにか怪しいイメージがある、マネーロンダリングなど不正に利用されたりしないのか、といった声が聞かれます。
実際のところ、こうした犯罪のリスクはどうなっているのでしょうか。
今回は、仮想通貨にまつわる犯罪のリスクをマネーロンダリングの観点から解説していきます。
目次
1.そもそも資金洗浄(マネーロンダリング)ってなに?
麻薬の密売など、闇で利益を得た分のお金を、表で使えるきれいなお金にすることをマネーロンダリングといいます。
このマネーロンダリングの手口はいくつもありますが、一番有名なのがペーパーカンパニーを使ったやり方です。
どこかの国に書類上にだけ存在する会社を作って、その会社にこっそりと闇の金を入金し、その後そのお金を売上金として回収するというもしくみです。
仮想通貨を使ったマネーロンダリングも、これとほとんど同じです。
闇のお金で仮想通貨を購入して、その仮想通貨を使用して商品を購入したり、あるいは円やドルなどといった実物の通貨に換金することで、きれいなお金に替えてしまいます。
これをいろいろな取引所で繰り返すことにより、資産の出所を突き止めるのが難しくなるので、闇の金がきれいなお金になります。
2.仮想通貨がマネーロンダリングに利用される危険はないの?
仮想通貨は、インターネット上のお金という性質から犯罪と結びつくのではという意見もあります。
そのため、人によってはマネーロンダリングの危険性を疑うこともあるでしょう。
しかし、仮想通貨の場合、取引された記録は全てデータ上に残ります。
私たちが普段使用している現金を手渡しで渡せば記録には残りません。従って、渡したお金の行方をわからなくさせることも可能です。
例えば、5000円をあなたから家族に手渡しで渡せばどこにも記録が残りません。
しかし、仮想通貨ではそれがあいまいになることがありません。仮想通貨は実態が存在しないためにデータのやりとりになりますので、必ず取引記録が残るのです。
ビットコインがマネーロンダリングに利用される危険性はないと言われている理由は、ブロックチェーンにて取引履歴の全てが記録され、誰もが過去の取引を追跡できることにあります。
つまりビットコインの仕組み自体が、マネーロンダリングに向かないのです。
また、今年の2017年4月から仮想通貨に関する新たな法律が施行されました。
これにより、取引所の設置基準、利用者の本人確認等が徹底されるようになりました。
取引所が仮想通貨取引の関所として機能したことにより、不正な資金の動きを後から追跡することが可能になり、必要に応じて警察のサイバー犯罪課に情報を提供することも可能になっています。
3.仮想通貨によるマネーロンダリングの実例
先月、ギリシャで40億ドル以上のマネーロンダリング(資金洗浄)に関与したとして、ビットコイン取引所「BTC─e」の元運営者であるロシア人の男が逮捕されました。
米検察当局によると、ビニック容疑者は東京のビットコイン取引所「マウントゴックス」の破綻にも関連したとみており、ハッキングによりマウントゴックスから資金を入手して、BTC─eと自身がもつ別の取引所を通じて資金洗浄した疑いがもたれています。
世の中の現在のお金であるお札の資金洗浄の摘発率は1%未満です。資金洗浄がないよりも、明るみになっていないケースのほうが多いのが実情です。
今回の事件のように、ビットコインなどの仮想通貨は取引記録を追跡しやすく、資金洗浄が明るみになりやすいです。
4.仮想通貨によるマネーロンダリング対策のゆくえは
現在は犯罪のリスクが低い仮想通貨ですが、将来はどうなるのでしょうか。
世界では、仮想通貨のマネーロンダリング対策が進められています。
EUはテロリストのマネーロンダリング対策として新たな規制強化を提言し、この提言でEUの委員会は規制範囲を定めるリストを作成、仮想通貨やプリペイドカードなどの電子マネーなどが対象となるそうです。
上に挙げた取引所の例のように、今後も引き続きマネーロンダリングが起こらない、とは言い切れなさそうです。
仮想通貨による取引が進展していくにつれてこのような犯罪行為のための適切な規制を行うには、規制する側のビットコインに関する知識をより深めていくことが求められます。