
ビットコインなどの仮想通貨と共に語られているブロックチェーン。
仮想通貨に組み込まれた技術で、その特性について取り上げられる場面も増えてきました。
今回そのブロックチェーンについて、イギリスであるニュースが飛び込んできました。
それは、イギリスの大学で学位偽造を防ぐために、ブロックチェーンの導入が検討されているとのこと。
今回はブロックチェーン技術をキャリアにおいて活用していくメリット、その課題などについて解説します。
1.そもそもブロックチェーンとは?
ブロックチェーンとは、簡単に言うとコンピューターネットワーク上の記録台帳のこと。
このブロックチェーンは金融取引などの複数の情報を含むブロックという一定の単位に分かれていて、ブロック同士を時系列順に繋いでいきます。
ブロックが鎖状につながっていることから、こう呼ばれています。
もともとは仮想通貨ビットコインの中核技術として考案された技術を発展、独立させたことが始まり。
現在では政府や銀行などが記録を集中管理し、改ざんや二重取引がないか確認していますが、新技術ではすべての取引記録をネットワークの参加者それぞれが保有し、お互いにデータの確かさを検証することで、改ざんを防ぐようになっています。
またブロックチェーンは分散データベースであり、巨費を投じてハードウェア・メーカーからコンピューターを購入せずに済みます。
そのため通貨やデリバティブなどの金融資産の取引を、分散データベースで記録できれば、大幅にコストを削減できると期待されています。
2.学歴に活用される背景
日本ではショーンK氏の経歴詐称が記憶に新しいですが、学位の改ざんがイギリスでも非常に深刻な問題になっています。
実際にイギリス国内で、4人に1人が履歴書で学位に関する嘘を記載しているとのデータが発表されました。
これを受けてイギリスでは、高等教育データチェック(Higher Education Degree Datacheck, HEDD)と呼ばれる偽造書類による就職防止のための中央管理型システムがすでに稼働しています。
このシステムにより、だれがどのような学位を持っているのかを簡単に把握することができます。
しかし、このシステムにはある欠点があります。
それは、経歴を調べるたびにコストがかかってしまうこと。
実際、調査1件につき12ポンドのコストがかかっているのが現状だそうです。
3.ブロックチェーンでこう変わる
イギリスでは上記の問題を受けて、ブロックチェーンの活用が検討されました。
ブロックチェーン技術を使用すれば、より早くかつ安く調査を行うことができるようになります。
内容は、ブロックチェーン技術を駆使して誰でも閲覧が可能で安全なデジタル台帳を作成し、各大学がブロックチェーン上で卒業生の学位を管理するといもの。
これにより、理論上は新入社員が履歴書に書いている学歴に嘘があるかどうかを企業側が確認する作業をなくすことができるそうです。
ナレッジ・メディア・インスティテュート大学のドミニク氏は「学位を誤魔化すほど、信憑性を確認するためのコストが高くなる。ブロックチェーン上で応募者の所属している学校機関の成績情報を検索できるシステムを構築すれば、雇用者は低コストでより多くの応募者の学位の確認ができるようになる」と指摘しています。
ブロックチェーンが今後就職活動において導入されれば、採用担当者は、ブロックチェーン上の学位記録から、特定の分野を学んだ候補者をフィルタリングしたりすることも可能になり、わざわざ無数の職務履歴書を全て読む必要も無くなります。
その結果的、効率的に適切な候補者を選ぶことができるようになるでしょう。
4.私の考察
採用活動で用いられる場合の課題は、やはりプライバシーの問題でしょう。
不特定多数の人に自身の学位を参照されてしまうため、プライバシーの管理が重要になってきます。
コンプライアンスの観点でみると、全学生の学位に関するデータが第三者によって参照できる状態は倫理的に問題があると言えそうです。
この件についてドミニク氏は、学位に関する証明書を暗号化して制限時間を設けた解除鍵を雇用者に付与することで、この問題を解決できると主張しました。
今後ブロックチェーンを活用するにあたっては、応募した仕事に関連する経歴や資格のみ開示可能にするなどの技術面での改善が求められるでしょう。