
仮想通貨によって誕生した新技術、それがブロックチェーン。
これがなんと、食品業界でも活用される兆しがあるそう。
IBMはウォルマート、ドール、ネスレといった、食品関連の大手企業と協力して、ビットコインの基盤技術であるブロックチェーン技術を食品サプライチェーンにおいて導入することを検討しているとのこと。
今回はブロックチェーン技術が食品業界において、どのように活用されていくのかについて解説していきます。
1.そもそもブロックチェーンってなに?
ブロックチェーンとは、簡単に言うとビットコインなどの仮想通貨の中核になっている取引データ技術のこと。
取引のデータ(履歴)をトランザクションと呼び、そして、複数のトランザクションをひとつにまとめたものをブロックと言います。
このブロックが鎖のように一つに繋がれて保存された状態がブロックチェーンなのです。
ブロックチェーンは分散して管理されるのが特徴であり、仮想通貨などを利用しているあらゆる利用者のコンピューターに過去の取引記録が保存されます。
銀行のような特定の管理機関が存在しないため、権限が一箇所に集中することはありません。
そのためシステム障害に強く、かつ低コストで金融サービスなどが運用できると期待されています。
2.食品業界でどうやって活用するの?
ブロックチェーン技術が食品業界で期待されている一番の理由が、食品汚染・偽装対策でしょう。
ではこうした課題に対して、どう活用していくのでしょうか?
・現行の食品追跡の課題
現在行われている食品汚染対策だと、問題の食品がいつ、どこで汚染されたのかを特定するためには、数カ月掛かってしまうこともざらにあります。
その間に、追跡しきれなかった汚染食品を食べてしまった人が健康を損なうこともあり、被害が拡大するおそれもあります。
また、予防措置の一環として対象となった食品が必要以上に廃棄されてしまう、食品ロスの問題もあります。
政府広報によれば、日本では年間1900万トンの食品廃棄物が出ており、安全なのに捨てられるというのは大きな損失でしょう。
・ブロックチェーンでこう変わる!
しかしIBMによると、ブロックチェーン技術を活用すれば、こうした問題に対して迅速な対応が出来てしまうとのこと。
同社はすでにウォルマートと協力し、食品を追跡できる技術の実験を中国において実施しました。
具体的には、食品サプライチェーンにおいてブロックチェーンは、食品ひとつずつ、あるいは特定の単位ごとに、発生したことを全て記録します。
つまり、ある食品がどこから出荷されたのか、あるいは、サプライチェーンのどこで汚染されたのかを簡単に特定できるようにするのです。
この実験では、豚肉のサプライチェーン追跡に要する時間が26時間からわずか数秒に短縮されたとの報告がありました。
ブロックチェーンが多くの食品関連企業で活用されれば、食品ロスの問題が解消できる日も近いかもしれません。
3.私の考察
しかし、こうしたブロックチェーンの活用には大きな課題があると考えます。
それは、第三者機関が存在しないため、問題が発生した時、誰が責任をとるのかが曖昧ということ。
現在のブロックチェーン技術だとトラブルが起こった際に、誰が責任をとるべきか、ふたを開けてみないとわからない状況にあります。
現在仮想通貨で発生しているトラブル関連の訴訟は、まさにその典型といえます。
今後も未知のトラブルが発生する可能性を十分に考慮する必要があるでしょう。
責任の所在はどこにあるのか、その点については国が率先して民間のブロックチェーン関連の技術者などを交えて法整備を検討していくことが求められるでしょう。